Jump アカウント構成で外部 ID プロバイダとして Entra ID を利用する
Jump アカウント構成において、外部の ID プロバイダとして Microsoft Entra ID を利用する構成を試してみました。
構成イメージ図は下記の通りです。Jump アカウントに IAM ユーザーを作成するのではなく、IAM ID プロバイダを作成して Entra ID と SAML で連携します。ID プロバイダには他のアカウントにスイッチロールできる権限の IAM ロールを関連付けます。スイッチロール先アカウントの IAM ロールでは Jump アカウントの IAM ロールを信頼します。
Jump アカウントと Entra ID の連携設定
Entra ID (旧 Azure AD) と AWS アカウントを連携する手順は次の Microsoft ドキュメントに記載されています。
チュートリアル: Microsoft Entra SSO と AWS Single-Account Access の統合 - Microsoft Entra ID | Microsoft Learn
手順は下記ブログでも紹介されているため、今回は下記ブログの手順で Jump アカウントと Entra ID の連携設定を実施します。
この設定の際に、Jump アカウントで作成した ID プロバイダに関連付ける IAM ロール名はdemo-assume-role
として、他の AWS アカウントにスイッチロールできるように下記のポリシーを設定した IAM ポリシーをアタッチしました。
{ "Version": "2012-10-17", "Statement": { "Effect": "Allow", "Action": "sts:AssumeRole", "Resource": "*" } }
スイッチロール先アカウントの設定
スイッチロール先アカウントにおいて、Jump アカウントの IAM ロールdemo-assume-role
を信頼する IAM ロールを 2 つ作成します。作成・更新作業が無いときは ReadOnlyAccess を利用し、作成・更新作業が必要なときは AdministratorAccess を利用することを想定しています。
項目 | 設定内容 | 設定内容 |
---|---|---|
IAM ロール名 | administrator-access-role | read-only-access-role |
許可 - AWS 管理ポリシー | AdministratorAccess | ReadOnlyAccess |
許可 - カスタマー管理ポリシー | なし | なし |
許可 - インラインポリシー | なし | なし |
信頼ポリシー | 下記参照 | 下記参照 |
信頼ポリシーは下記としました。Jump アカウントの IAM ロールを信頼します。
{ "Version": "2012-10-17", "Statement": [ { "Effect": "Allow", "Principal": { "AWS": "arn:aws:iam::111122223333:role/demo-assume-role" }, "Action": "sts:AssumeRole" } ] }
動作確認
Entra ID の「マイ アプリ」ページから Jump アカウントにアクセスします。この際に、Jump アカウントの IAM ID プロバイダに複数の IAM ロールを関連付けしている場合は、利用するロールを選択する画面が表示されますが、今回は関連付けしているロールは 1 つのためロール選択画面は表示されずに Jump アカウントに遷移します。
Jump アカウントにアクセス後は、スイッチロールの設定をします。
administrator-access-role
とread-only-access-role
の両方のロールでマネジメントコンソールにアクセスできました。画像右上にスイッチロールの設定で指定した表示名が表示されています。
複数のユーザーと権限の管理
今回のブログではシンプルな例で試しまたが、実際の環境は複数のユーザーやプロジェクトがあります。その場合は主に次の 2 通りの設定ができそうです(他にもあるかもしれません)。
1 つ目は、Jump アカウントに複数のロールを用意して、最終的にアクセスするアカウントにおいて Jump アカウントのロール単位で信頼するパターンです。
2 つ目は、Entra ID からは Jump アカウントの AsuumeRole 用ロールのみにアクセスできるようにして、最終的にアクセスするアカウントの信頼ポリシーで Entra ID ユーザーの一致も条件に指定するパターンです。
Entra ID にユーザーが増えた場合に最終的にアクセスするアカウトでユーザーを追加する手間が発生することになります。一方で、Entra ID 側の設定変更の手間を少なくできる可能性があるため、Entra ID と AWS の管理部署が異なり、Entra ID 側を簡単に設定変更できない場合などには便利かもしれません。
2 つ目のパターンを実現する、最終的にアクセスするアカウント(上図のスイッチロール先アカウント)における IAM ロールの信頼ポリシー例です。Condition でユーザー名の一致を条件としています。
{ "Version": "2012-10-17", "Statement": [ { "Effect": "Allow", "Principal": { "AWS": "arn:aws:iam::111122223333:role/demo-assume-role" }, "Action": "sts:AssumeRole", "Condition": { "StringLike": { "aws:userid": "*:user-name@example.onmicrosoft.com" } } } ] }
次のブログでも紹介されている方法となります。
両方のパターンにはそれぞれメリットとデメリットがあるため、状況に応じて検討する必要がありそうです。
さいごに
Jump アカウント構成において、外部の ID プロバイダーとして Microsoft Entra ID を利用した構成を試してみました。外部 ID プロバイダーを利用することで AWS 側の IAM ユーザーを作成せずに既存の ID 基盤のユーザーで AWS を利用できることを確認できました。
以上、このブログがどなたかのご参考になれば幸いです。